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世界平和を
大樹
すばらしき人生139
 七月を旧暦で文月といいます。文月の由来は、七月七日の七夕に詩歌を献じたり、書物を世風に曝したりする風習があるからというのが定説となっております。

 また今年も暑い夏がやって来ます。熱中症には気をつけて、こまめな水分補給をしましょう。電気料金も上がり大変ですが、暑ければ迷わずエアコンを入れましょう。自己管理をして乗り越えることが重要です。

 気象庁によりますと、今年の台風は二十三個前後発生するという予測が出ております。地球温暖化の影響と思われますが、例年、台風が大型化しております。暴風雨には十分な注意が必要です。

 元旦に発生した震度七の能登半島大地震はいまだ復旧していない地域もあります。南海トラフも心配です。地震だけは誰も予測できないものですが、普段よりいつ発生してもいいように、大事なものをリュックにまとめておく必要があります。いざとなったときに家族との集合場所を事前に決めておくことも大事です。

 先般の教祖祭には多くの信者の皆さまにお参りをいただきありがとうございました。今月は施餓鬼先祖大法要会がございます。ご先祖さまに「ありがとうございます」と、こころの底から感謝することです。

 私がサラリーマンのときでした。静岡県の責任者をしておりました。配属から三年目に課長に昇進したときのことです。私の最初の部下のAさんは、明るく素直な性格でした。彼は理科系で臨床検査の学部を専攻され、多少は医学、薬学にも知識があった人でした。しかし、彼はしゃべり上手ではないタイプでした。

 人間のコミュニケーションツール(手段)として会話をすることが、一番重要となります。その会話が上手にできないとなると、育てるにも限界があると思いました。しかし、ここで諦めたら上司としての責任を果たせない結果となってしまいます。

 そこで、彼をしゃべり上手な営業マンとして育てなければ行けないと思い、まずは、相手からの信頼を得るためには傾聴力を磨かないといけません。話し上手は聞き上手という有名な言葉があります。営業マンは皆この基本をマスターするのです。

 一緒になって問題を考える、そしてタイムリーに提案する。この繰り返しが信頼を増す大きなチャンスです。

 傾聴というのは相手の言うことを良く聞き取るというトレーニングです。相手の気持ちを理解し、どうしたらメリットがあるのか、相手の利益や考え方がどうなのかを聞き取る力を上げないといけません。

 いわゆる、問題提起型と解決型の営業の実践を体得させることが重要なのです。相手の考えている問題点や希望など上手に相手から引き出す話法なのです。そして、それが引き出せたら、新たな提案をしてみる。反応があれば進めるが、なければ別の提案をする。この作業で相手の信頼を確実に取るのです。

 よくものごとを聞かなければ、何も情報は得られません。傾聴することは営業の基本です。当然、この手法を体得しなければ、営業なんて務まりません。だから、Aさんも、もがいて、苦しんで、ようやく傾聴という技術を身に着けたのです。そして、いろんな提案をするには、雑学知識があった方が良いのです。いきなりストレートに話をしても聞いてもらえません。そこで雑学知識が生きてくるのです。Aさんも人並みに雑学知識ができ、第一線で活躍できるようになったのです。

 決して努力はうそをつきません。努力して、苦労した分だけ成功できるのです。人生、生涯勉強であり努力なのであります。

 さて、仏教的に考えますと、原始脳に支配されている感情は、良くないものです。存在欲と恐怖感という感情に代わりに、智慧があればよいのです。しかし、感情を捨てることはできないので、「感情を捨てなさい」といっても意味がありません。だた「感情は悪い」と理解するだけです。

 それから、新たに「苦を乗り越えよう。幸福に達しよう」と、生きる目的を変えます。苦しみたい、不幸になりたいと思う人はいません。人間は苦しみをなくして幸福になることを目指しながら、苦しみに陥る生き方、不幸になる生き方を選んでしまっているだけです。そうならないためにも物事をありのままに観るようにすることがとても大事なのです。

 「私は幸福ですか」ということを常に考えることが、幸福につながる道なのです。幸福を目指そうとしても、原始脳からの感情が生まれます。怒り、嫉妬、憎しみ、欲、傲慢、見栄などの感情が湧きます。数が多いので三大煩悩の貪・瞋・痴(欲・怒り・愚痴)の三つにまとめました。それから私たちは経験的に、嫉妬、怨み、憎しみ、落ち込み、興奮、混乱、舞い上がり、わがまま、傲慢などの感情も知っております。

 では、幸福に達する道を歩みましょう。これらの悪感情を無理になくそうとしないでください。打ち勝ってやるぞと無理に努力する必要もないのです。こころに表れた感情に、ただチェックを入れてください。

 たとえば、「いま、怒りが起きました」「いま、欲が起きました」「いま、嫉妬の気持ちです」「いま、興奮しています」「いま、落ち込んでいます」などなどです。ただ、チェックを入れておくだけです。

 最初のチェックを入れたところで、二番目のチェックに進みます。これもいたって簡単ですが、少し訓練しておかないと、忘れてしまう恐れもあります。

 たとえば、怒りが込み上げてきたとします。「いま、怒りがある」と第一のチェックを入れます。次に「いま、私は幸福?」「いま、私は楽しい?」「いま、私は安らぎを感じている?」と、チェックを入れます。

 そのとき、「いま、私は幸福ではない」「いま、楽しくはない」「いま、安らぎを感じていない」という現実を発見します。それから「いま、幸福ではない」と、さらにチェックを入れればよいのです。

 無理に何かをして、不自然に幸福感をつくろうとしないでください。素直であることが大切です。

 たとえば、人に言われたことで気分が悪くなった。そのときは、みんなその感情に引っかかるのです。失敗するのです。言われたことに傷ついたら、気分が悪くなります。それは「怒り」という感情です。チェックを入れましょう。

 次に「いま、私は楽しい?」と自分に聞いてみる。答えは明確です。「いま、楽しくない。幸福ではない。安穏・安らぎを感じていない」。その事実にもチェックを入れてみる。これで、ただちにこころが晴れてしまうはずです。こころが晴れることはなくても、気にしないでチェックを入れるのです。繰り返し復習することで、瞬時に幸福になるすべが身につきます。

 人に何か言われて、傷ついて嫌な気分になる。その感情が込み上げて、言われたことに反応したいという意欲が起きてしまうのです。ひとこと言い返したくなる。反論したくなる。喧嘩したくなる。相手にも傷つく言葉をぶつけたくなる。

 そのような行為をしたくなった時点で、その意欲にチェックを入れてください。次に「反撃したい意欲を持っている私は、幸福ですか?安穏ですか?楽しいですか?」と問いかけてください。

 反撃したい、言い返したい、傷つく言葉をぶつけたい、という気持ちは、ただちに消えていくはずです。悪い結果になるはずの行為が、実行する前になくなってしまうのです。

 これは自然の流れです。チェックを入れる人は、何の無理も我慢もしていません。自分の気持ちを抑えて、押し殺そうとして、精神的にストレスを感じることもありません。不思議なことに「私は幸福ですか?」とチェックを入れただけで、幸福になっているのです。悪感情が自然に消えたので、自分のこころを褒めてあげたくなるのです。

 たとえ、その行為が失敗したとしましょう。傷つける言葉をぶつけたい意欲が消えなかったのです。そもそも、人は意欲があるときには、ただちに行為に進むのが自然です。喋りたいのに喋らないでいることはストレスになります。意欲とは一種のストレスなのです。

 そこで自分が、相手を傷つける言葉を喋り出すのです。感情を抑えきれず、喋っているまさにそのときに、チェックを入れましょう。「いま、傷つける言葉をぶつけているのだ」とチェックを入れつつ(気づきを持って)喋るのです。

 次に「いま、私は幸せですか?」とチェックを入れるのです。すると「喋っているいまは、幸せではない」と発見するでしょう。その発見があったなら、喋る意欲がただちになくなります。話は途中で終わってしまい、相手に与える損害も少なくなります。逆に、気持ちが晴れるまで思う存分、傷つける言葉をぶつけたら、とても悪い結果になります。何年も怨み憎しみを抱えたままの人間関係になるでしょう。

 大惨事になるはずのところが、発見があれば、少々の損害で済んだことになります。このような結果になれば、それは幸福な生き方以外何ものでもありません。

 ただチェックを入れるだけの作業です。この場合でも、自分を幸福に導いたのは「私はいま、幸せですか?」というチェックです。ただちに効き目が現れます。このチェックを入れる作業は、一回や二回で成功して万事うまく運ぶということにはなりません。原始脳の刺激は、それだけ強烈なものだからです。失敗しても失敗しても繰り返し復習して、チェックする能力を育てることが大事です。

 行為を途中でやめることができなくて、終わりまでやってしまったとします。そのときも、終わった行為にチェックを入れましょう。「相手を傷つける言葉をぶつけました」とチェックを入れる。それで、どんな結果になったのかとチェックを入れる。「その結果によって、自分も他人も幸福になったのか?安穏になったのか?楽しくなったのか?」とチェックを入れるのです。

 そうすると「不幸な結果をつくりだした。苦しみをつくりだした」と発見します。それにもチェックを入れましょう。二度と同じ過ちを繰り返さない人間に成長するはずです。これこそが、人生を好転させる道なのです。

 実践する場合は、自分のこころに現れる怒り・嫉妬・憎しみ・欲・落ち込みなどの感情に、適宜チェックを入れてください。このチェックを入れる作業は、仏教用語でいえば「気づきの実践」なのです。この作業は、自分の気持ちを抑えたり、堪えたり、我慢したりすることもありません。すべて水が流れるように、スムーズに好転していくのです。とにかく、「いまの自分は幸せですか?」と自分自身に問いかけることがとても重要であるのです。

 教祖・杉山辰子先生は妙法の不思議な力を信じることの重要性を説かれました。深く、深く信じることです。そして、「妙法蓮華経」の五文字を唱えるときに、大きな功徳があると言われました。

 常住坐臥いついかなるときも、妙法を唱えていると、不慮の事故や災難から免れることができると仰せです。常に唱えていれば護られるということです。

 教祖さまの語録に「悲しむ人にはこころから慰め労り、飢えた人には食を与え、寒さに震える人には衣類を施す等、人の喜ぶこと、人の便利を図ること、他人が見ておろうが見ていないに拘わらず、一生懸命に実行せられ陰徳を積んでください。必ず陽報は子宝となってあらわれます」と、施しがとても大事と仰せです。

 『慈悲』『誠』『堪忍』の三徳の実践がとても大事です。三徳のなかでも慈悲の功徳は絶大です。慈しみを育てることです。具体的には、見返りを求めず、人さまに善いことをして差し上げる。その方の喜んでいる姿を見て、素直にこころの底から喜べることができるかどうか。喜べたら慈しみが一つ育ったということです。

 慈しみが育てば人格が向上します。そうすれば、〝すばらしき人生〞へと高めていくことができるのであります。


  合 掌

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