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世界平和を
大樹
すばらしき人生127
 今月の大樹は記念すべき八百号です。法公先生が第一号を執筆され、あしかけ六十七年となります。一冊、一冊の積み重ねが、今日の法公会であります。謹んで歴史の重みを感じております。

 暑い夏がやってまいりました。七月を文月と申しまして由来は七月七日の七夕に詩歌を献じたことと言われております。皆さまも短冊に願いを込め書けば、夢や希望が叶うことでしょう。

 今年の台風予測は平年より多い二十九個前後との発表がございます。地球温暖化が影響していると思われますが、年々台風が巨大化しており、暴風雨も強くなってきております。今までの台風とは状況が違ってきております。直ちに身を守る行動をとること、非常事態に備えて、食料や水などの非常時用品の備蓄も必要となります。備えあれば憂いなしということです。

 新型コロナウイルスの状況は拡大しているのか縮小しているのか、よく分かりませんが、感染防止対策は継続的に実施しないといけません。ワクチンの定期接種も、まだしばらく続くと思われます。できるだけ接種を受けられた方が良いと思います。

 令和五年教祖祭、杉山教祖九十二回忌より行事も無事開催することができました。三年半という長い間、法公会の祭事は中止せざるを得ませんでした。ようやく長いトンネルを通り抜けたという感じです。今後、更なる感染拡大がなければ、継続していけるものと思っております。

 七月二十三日開催の盆施餓鬼先祖大法要会も開催予定です。多くの信者の皆さまのお参りをお待ちいたします。

 私がサラリーマンの時でした。四国の責任者をしておりました。四国というのは、本当に不便なところでした。しかし、人間性はとても良く明るい気質の性分の人が多いように感じました。

 香川県を担当しておりましたTさんは、入社三年目でしたが、私が指導することは何もないとても優秀な人材でした。一方、徳島県を担当していたHさんは、入社五年目で中堅社員でありましたがTさんとは対照的な人間でした。

 Hさんは、マイナス思考が強いところがあり、何事も悪い方へ、悪い方へと考え込むタイプでした。こういう性格では売り上げを伸ばすことはとても難しいのですが、Hさんをモチベーション(やる気)しない限り、支店の売り上げを上げるどころか、よくない結果に陥ることは、簡単に想像できます。

 自分を変える、ひとつの方法として異動があります。そこで、Tさんを徳島に、また、Hさんを香川に転勤させ、指導しなくてはならないと考えたのです。

 彼は、製品知識や必要な情報は、毎月の研修やテストを受けており充分持っております。問題は仕事に対する取り組み方と、メンタルな部分のトレーニングが必要でした。彼を、精神的に強い、タフな性格に変えないと現状打破はできません。

 大きなこころになれるような、前向きに考える思考力を身に着けないといけません。一番大切なことは、彼に成功体験をしてもらうことです。彼が成功できるよう、お膳立てをする必要がありました。

 とにかく、自信をつけなければ、成功はあり得ないのです。私は、彼が新たに担当になった高松市の基幹病院の糖尿病専門のK先生にお願いし、十例ほど他社製品からの切り替えの協力をしていただきました。そのことでHさんは自信をつけたのか、少し前向きになってきたのです。

 ひとつの自信は更なる自信へとつながります。彼がチャレンジしようと思ったことが、幸いにして良い結果になったのです。なかなか人間の性格は、簡単には変えられないものです。

 彼は、コツコツと努力して、見事に人間改革をしたのです。「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という名言にあるように、どんなことでもチャレンジすることが成功につながるということなのであります。

 さて、仏教的な思考に立つと、人間は「ためる」ことを避けることはできないのです。私たちが現実にため込んでいるものをよく観察してみると、二つのタイプがあることに気づきます。

 たとえば、お金。これは計画を立て、意図的にしないと貯まらないものです。お金だけでなく、知識や能力についても同じことがいえます。こういうものは、空から自然と降ってくるものではありません。山の中に入ったからといって、いくらでも拾えるものでもありません。私たちが計画を立てて、努力をしてためないと、たまりません。

 一方、部屋のゴミ箱にたまっているものは何でしょう。ゴミです。それは、努力しなくても、勝手にたまっていくものです。

 つまり、たまるものには、計画的に、意図的にに、努力しなくてはたまらないものと、努力しなくても勝手にたまっていくものの、二つに分けることができるのです。

 努力しないとたまらないものについて、もう少し分析してみましょう。仏教では、計画を立てて何かをためていく際に、必ず功徳をためなさいと説きます。一般的な言い方をすれば「徳を積みなさい」ということです。

 「財産や知識を努力してためなさい」というのは、仏教でなくても、だれでも言うことですが、仏教はもう一項目を加えて、『功徳をためなさい』と言うのです。

 功徳とは、善行為をすることで、その人が得るエネルギーのことです。お釈迦さまも、経典のいろんなところで、「功徳を蓄えなさい」「功徳をためなさい」とおっしゃっておられます。

 「ためるなら、何をためれば良いでしょうか?」と尋ねられたら、現代の男性だったら、「金は安定しているので、金を買ってためておいたほうがいい」「いや、今は国債を買っておいたほうがいい」などと考えてしまうでしょう。

 しかし、お釈迦さまは、「功徳をためなさい」と答えるのです。計画的に、意図的にためたもののなかには、勝手に逃げて行ってしまうものもあるのですが、功徳は勝手に逃げません。功徳は逃げずに残るのです。

 たとえば、ある人が田舎で山歩きをしていたとしましょう。途中で心臓発作を起こして倒れていた人に遭遇し、その人に人工呼吸をして息を吹き返せたとします。すぐに救急車が来たので、自分が努力した時間は十分程度だったかもしれません。しかし、発作を起こした人が、その出来事を忘れることができるでしょうか?

 たとえ助けた相手の名前は忘れてしまったとしても、自分がやった善行為と、それによって生まれた功徳そのものは、消えずに残るのです。ですから、善行為や功徳は、決して自分から逃げないのです。

 では、財産や知識はどうでしょうか?知識をいくら頑張って得たとしても、人間は時間が経てば忘れてしまうものです。お金も、いくら貯めても、知らないうちに減っていくものです。

 実際、お金に関しては、苦労して銀行に預金しても、失ってしまうリスクがあります。日本ではペイオフ(預金保護)制度があり、法律で定められております。

 ペイオフというのは、仮に金融機関が破綻しても、預金保険機構によって、預金者への払い戻しを保証する制度ですが、必ずしも全額が支払われるわけではありません。支払い保証金額には上限があるのです。

 日本の場合、支払い保証は「一つの金融機関で預金者一人につき一千万円とそれに対する利息のみ」と制限されているのです。

 つまり、仮に銀行がつぶれても、弁済されるのは最大で一千万円程度というわけです。それ以上の金額を預けていたら、それ以上は支払われないのです。その損害と責任は預金していた人が負わなければならないのです。

 そこで、お金をたくさん持っている場合は、複数の銀行に口座を作って、貯めたお金を分散して預けた方が良いということになります。私がここで言いたいのは、いくら苦労してお金を蓄えても、結果的に自分のものにならない場合もあります。

 これは、お金だけの問題ではありません。皆さんが高級ブランドのオシャレな服を買って、ためて、コレクションしていたとします。ところが、いくらブランドの服であっても、時代が変わると、色やデザインが古臭いものに感じられるようになって、着られなくなってしまいます。

 金で作られたアクセサリーであっても、その大きさやデザインの流行は時代によって変わるもので、大切に保管したところで、価値が下がることはあり得ます。真珠の場合、形はどれも丸いので、デザインは時代が変わってもさほど変わりないでしょう。しかし、真珠は鉱物ではないので、いつまでも品質が保たれるわけではありません。丁寧に手入れしないと、変質してしまいます。

 世の中には「健康」をためようとする人も結構います。良いご飯を食べて、健康食品を摂って、毎日しっかりと運動する。女性の場合は、肌の美しさを保つために、なるべく日光を直接浴びないように、真夏でも長袖のシャツを着て、極力からだを隠そうとする。しかし、健康や若さというものは、年相応に変化し逃げていくものです。

 豆腐を買ったとしましょう。でも、今日は食べたくない。しかし、豆腐には賞味期限があります。そして、消費期限が過ぎてしまったら、食べられなくなってしまいます。つまり、日ごとに豆腐は「逃げている」のです。

 このように時代が変われば、使えなく逃げていってしまうものはたくさんあります。私たちが意図的にためるものは、勝手に逃げる。知識であろうが、お金であろうが、健康であろうが、勝手に逃げる。

 「貯めても逃げる」という法則に日ごろから気をつけているならば、むしろ私たちはどんな態度をとってもよいのです。

 食べ物なら、それが「逃げる」前に、つまり消費期限の前に食べるか、あるいは冷凍庫に保存するか、それとも捨ててしまうかなどを、適切に判断すればよいのです。

 逆にいうと、適切な判断をするためには、「これは逃げていくものだ」という法則を理解することです。

 たとえば、誕生日に高級チョコレートをもらったとします。でも、あまりにも高級であったので、箱を開けずにそのままにしてしまい、そのうち、もらったことすら忘れてしまったとします。

 しばらくして思い出して、その美しい箱を開けてみたら、なんと、チョコレートにカビが生えていた。一万円、二万円もするような高級チョコレートだったのに、一個も口に入れることができなかったわけです。そして、全部捨てることになり、後悔と反省をすることになったのです。

 私たちは、計画を立てて、プログラムを組んで、いろいろなモノを蓄え、ためていきます。しかし、「蓄えたモノやためたモノは、逃げる(減っていく)という法則がある」という真理を、日ごろより理解しておかねばならないのであります。

 教祖・杉山辰子先生は妙法を深く信じることが大事と仰せです。信じて、信じて、信心することに功徳はあるのです。そして、人間は目覚めるのです。世の中のあり様と、生きる目的がわかるのです。

 常住坐臥いついかなるときも、妙法蓮華経の五文字を唱えるときに護られるのです。教祖さまは、不慮の事故や災難から免れることができると仰せです。

 『慈悲』『誠』『堪忍』の三徳の実践がとても大事なところです。中でも慈悲の功徳は絶大です。『慈しみ』を育てるには、こころが大事です。こころを育てるには、人格を高めないといけません。人格を高めて、慈しみのこころを育てることが、〝すばらしき人生〞になれる最大の道であると思っております。


  合 掌
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