故事ことわざで”鉄は熱いうちに打て”といいます。人は柔軟性のある若いうちに鍛えることが大事だという教え。また、物事は時期を逃さないうちに実行しないと成功しにくいという教えでございます。鉄は熱してやわらかいうちに、打っていろいろな形にすることができます。人間も、純粋な心を失わず、若く柔軟性のあるうちに心身を鍛えることが大事であり、物事をなすときにも、熱意が盛り上がっているうちに実行することがとても大事であるということであります。
私が、会社に入り、仕事を覚え活動をしてきたわけですが、前号に記載をさせて頂きましたが、自分が未熟で、浅知恵のため失敗をしてしまったわけです。しかし、入社六年程経った頃より、だんだんと仕事が面白くなってきました。徐々に仕事の本質が見えてきたわけです。常に成功と失敗は表裏一体であり、失敗が無ければ成功もない。したがいまして、成功するためには、失敗をどれだけ多く経験したかがカギとなります。そして、失敗から学び、考え、知恵を出し、再度チャレンジする。この繰り返しが、成長の秘訣と思います。失敗を恐れず、与えられた事をやり遂げる。ここが重要であります。
仕事をするということは、会社の利益を創出しなければなりません。ただ、お給料を貰い時間から時間まで働けばいいと思ってはいけません。会社とは、常に売り上げを上げ、利益を上げ、製品力を上げ、信頼度を上げ、安全性を上げ、相手の立場になってスピードを持って対応することが求められます。最終的に顧客満足度を上げて、顧客の質の向上と顧客を増やすことが会社への貢献と思っております。
まず、仕事に取り掛かる準備として、朝、目が覚めたら今日に感謝し、一日の目標を立てます。私の仕事は医薬品流通の営業をしておりました。会社に出社すると毎日朝礼があり、会社全体の方向性とやるべき事の確認をします。すなわちビジョンの擦り合わせと、ベクトルを合わせます。自分の今日一日の行動計画を立て、そして営業に出かけるわけです。一連の仕事が終わると、会社に帰社し報告書を作成し帰宅するわけであります。家に戻り今日一日に感謝し、反省し、成功・失敗の原因を考え、どの部分が良かったのか、悪かったのかを分析し、解決策を立て、それが、また明日の目標となってゆくわけです。毎日この繰り返しになりますが。基本的なことですが、とても重要であります。
今の世の中は、情報社会と申しますが、それだけでは成り立ちません。分析力も問われるわけです。市場を分析するためには、情報が必要です。地域市場の分析、施設市場の分析、顧客市場の分析、あらゆるファクターを分析し解析しなければなりません。そして、自分のスキルを正しく理解することが必要です。長所・短所・得手・不得手を正しく理解することが肝要と思われます。その上で、対人関係において信頼関係の構築を目指さなければなりません。そして社内、或いは社外でライバル(目標)となる人を見つけなければなりません。ライバルがいないと成長は期待できません。もちろん自分以上の人選をしなければなりません。そして、ライバルに勝つために、課題を分析し、考え、解決策を編み出し、切磋琢磨しなければなりません。そして、ライバルに打ち勝った暁には、更なるライバル(高い目標)を選定してゆくことです。そのことの繰り返しが成長に繋がります。
”石の上にも三年”ということわざがあります。つらくても辛抱して続ければ、いつかは成し遂げられるということであります。私の場合は六年程経ちましたが、辛抱して確実にやり遂げることが、極めて重要であったと思いました。新入社員として会社に入り、一通り仕事を覚えると、なんだが先が見えてくるような気がする場合、どうしても仕事が性に合わない場合、人間関係がうまくゆかない場合とがあります。そうなると概ね三年前後で会社を変わるケースが出てきます。しかし、転職して今以上になるケースは極めて稀であります。なぜならば、仕事の本質、やり遂げるという執念、それと自分のスキルを理解しない限り難しいと私は感じております。そんな事を思っていた私も、お世話になった会社を辞めることとなりました。十二年間お世話になったのですが、転機があり転職をしました。
さて、冒頭に申し上げた”鉄は熱いうちに打て”ですが、確かにそう思うのであります。毎年新入社員が二十名前後入ってきます。私たち先輩どもは、今年どんな社員が入社するか、興味津々で見定めをするわけであります。入社時の挨拶や歓迎会での行動をみて、その新入社員の”人なり”を見極めるわけです。十人十色と申しまして、人さまざまであります。ですから、個人ごとに育て方が違います。長所を伸ばし、短所を減らしてゆく教育が求められます。そして、同じ目線に立って指導をする事が大切であります。やはり、新卒で世間を知らない人が多いので、ある程度のことは聞いても、ここぞ!・・・というときは、厳しい言葉で指導をしなければなりません。昔は、先輩の背中を見て育つ!・・・とよく言っておりました。山本五十六の名言で”やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かぬ”とあります。しかし昨今は、相手に対し同じ目線に立ち、色んな意見を傾聴し、理解し、性格を十分熟知したうえで、認知し、指導をしていく事を求められます。五十六の”やってみせ””褒めてやる”このフレーズは今でも重要なファクターであります。とにかく”鉄は熱いうちに打つ”ことが重要であります。指導する立場というのは、どの会社でも同じだと思いますが、管理職で概ね課長クラスが多いと思われます。現実はマニュアル通りに事は運ばないものです。相手の性格により、甘くすれば”付け上がる人”厳しくすれば”へこむ人”もおります。そのさじ加減が微妙に難しいのであります。
私が経験した中で、大卒の新人が配属になり、当時、課長でしたので一人前に営業活動ができるように教育をした時のことです。これは転職後の医薬品メーカーの時のことです。新人君に仕事をすべて教え、同行してコーチングし、担当を引き継ぎ、半年ほど経った時のことです。突然、会社を辞めたいといってきました。当時、静岡県を三人で担当をしており、新人君とベテランと私です。静岡県の東部を担当させたのですが、ドクターと面会しても、上手に会話ができないという事であります。とにかく仕事の話はしなくていいから、自分のことを話しなさいと忠告しました。しかし、どうしても自分の殻を破って前に出ることができないようでありました。そんなことが原因で消極的な活動になり、仕事が嫌になったということでした。そこで私は、とにかく本人の気持ちがどの程度、維持できているのか?今後、考え直すことができるのか?・・・ということを確認しなくてはなりません。そして、ある日、デニーズで夕食をとり、じっくりと話を聞いたわけです。理由は、静岡県東部を一人で担当することが、さみしいと云い出したわけです。大の大人が何を云うかと思えば、随分、甘えた考えでした。新人は、配属当初は誰でも意気揚々と自分の理想を語り、意欲を見せるものですが、半年経ったら本音が出たようです。どうも仕事が合わないようだと訴えてきました。しかし、一時の思い過ごしということもある為、どこの施設のどのドクターと話ができるのか?苦手なドクターは誰なのか聞き出しましたが、気の合うドクターは比較的、年齢の近い方なら何とか会話ができるようでした。しかし、私たちは、仕事上、院長、副院長、内科部長、様々なドクターに対し適正情報を提供しなければなりません。全面的に君のサポートをするから、考え直してほしいと諭しましたが変わりませんでした。その原因に、一人でさみしい、友達が近くにいない等々・・・辞める理由は沢山あったようでした。鯔のつまりは、東京で家族と暮らしたい!彼女と遠距離恋愛になってしまう!友達がいない!等々、そんな理由で会社を辞める人間に、ほとほと呆れるばかりでありました。しかし、どんな理由にしろ、精一杯、議論をしたわけです。気が付くと、いつの間にか朝の五時を過ぎておりました。結局、彼は辞めました。理想と現実のギャップで会社を辞めるのなら、理解はできるのですが、このような理由であるとは、驚きの一言でありました。したがいまして”鉄は熱いうちに打て”も相手次第であると思ったわけであります。
法公先生の法話に、”宿命は変えられる”とある行事で講演をされておられました。『人間には自分の徳の限界は1ミリも超えられない。宿命はどの人にもある。宿された運命すなわち、生まれた時に持ってきた運命、それが宿命である。その宿命を断ち切るのは”法華経”だけである。どんなに悪い業でも”法華経”は断ち切ることができる。その答えは”三徳”を積めば、いずれ必ず将来、良くなる』と講演されました。先生は、お釈迦様の「因果の二法」原理・原則・哲理に基づき三徳の実践、これが重要であり、六十五年間、継続されました。家庭でも、怒ったことは無く、毎日毎日「堪忍」をされておられました。六十五年間、一心に広宣流布と「三徳」を行ったことは、とても素晴らしい事であります。そして、柴垣法隆先生との縁がなければ、先生の運命も大きく変わったと思われます。法隆先生が目指しておられた志を先生がお引き受けになり、莫大な徳の恩恵を受け、法公会を立教させていただいたのであります。法隆先生にめぐり会えたことにより、良い運命を頂戴致しました。まさにそれが”すばらしき人生”であったと思えるのであります。
私たちも良い運命を呼び込むために、日々精進し、誠心誠意「三徳」を積んでゆくこと。すなわち、自分の『魂』を磨き続ければ、必ず良い運命になると信じて疑いません。
合 掌